水回りのバリアフリー対応、きちんとできてる?介護・老後のためのリフォームアイディア15選
日本では一昔前から超高齢化社会と呼ばれるようになり、
それに従って「介護」が他人事ではなくなってきています。
「なるべく周りの手を借りずに生活したい」と考える人も多いでしょう。
そのためには、両親だけでなく、自分の老後に向けた自宅のバリアフリー対策が必要です。
本記事では、高齢者の事故が多い水回りを中心に
バリアフリーのリフォームアイデアをご紹介します。
目次
水回りのバリアフリーリフォームアイデア15選
身体の自由が制限されたとき、
水回りの使い勝手が悪いとスムーズに生活できません。
場所別にリフォームアイディアをご紹介しますので、
気になる項目をチェックしてみてくださいね。
①キッチン
コの字型のレイアウトを採用する
キッチンのレイアウトには、I字型、L字型などがありますが、
コの字型(U型)が最も動線が短くて済みます。
3つのカウンターがそれぞれ垂直に交わっており、
キッチンの中で身体の向きを変えるだけで
下ごしらえ・調理・洗い物に取りかかることができます。
横移動は動線が長くなりがちで、作業効率が悪くなりがちです。
調理台、流し、冷蔵庫、食器棚などは
料理の手順に沿って少しずつ移動していけるようにすると良いでしょう。
上下稼働式のキッチン
例えば、車いすに乗っている人と立っている人とでは、
当然目線の高さが違うため、カウンターの適切な高さも違ってます。
存在を知らない方もいるかもしれませんが、
電動昇降機能を付けることでどちらにも対応させることができます。
シンクの高さが変わるので、使用者の目線に合わせて快適にキッチンを使えるのが魅力です。
カウンターだけでなく、収納スペースにも同じ機能を付けることができます。
スイッチやリモコン類を一か所にまとめる
換気扇、お風呂の給湯器の操作パネル、
収納棚のリモコンなど1か所にまとめておくと作業が楽になります。
位置の低いキッチンではシンクを浅型にする
深いシンクは排水口の掃除をするときが辛いです。
また、座って作業することを想定した場合、
ひざの辺りが開けている方が作業の負担が軽減されます。
②風呂場
暖房機能付き浴室乾燥機を設置する
お風呂場での事故で最も怖いもののひとつがヒートショック現象です。
ヒートショックとは、気温の変化に伴う血圧の急激な変動が身体に悪影響を及ぼすことで、
一度は聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。
お風呂場は脱衣所と浴室の温度差が激しいため、ヒートショック現象が起こりやすいのです。
暖房付き浴室乾燥機を設置することで、この室温差をなくし、ヒートショックの防止が期待できます。
それだけでなく、足元が滑りにくくなるため、転倒を防止できるのも魅力のひとつです。
浴槽に自動昇降機を設置できるようにする
介護の現場でよく使われているのが、浴槽内の自動昇降機です。
浴槽に取り付けるだけで、自動で湯に浸かったり上がったりすることができるため、
立ち座りの負担をなくすことができます。
介護する側の負担も軽減できます。
機器は浴槽の中や上に設置するため、ある程度の横幅が必要となります。
湯あかなどで汚れるため、継ぎ目の少ないものなどを選ぶのがお薦めです。
扉や窓にガラスを使わない
お風呂場では、十分な対策をしていても転倒してしまったり、
何かのきっかけでガラスを割ってしまったりする危険性があります。
換気、乾燥のための設備は発達しているため、
窓を換気以外の用途で使用しないのであれば、窓そのものを取り外すことも考慮したいです。
③洗面所
断熱窓にする
外気によって脱衣所が冷えすぎないようにするためと、保温性を高める工夫です。
角度を変えられる鏡にする
車いすで使用することを想定して、
下向きになる鏡を設置すると
座った位置からも見られるようになるため使い勝手が良くなります。
稼働式の鏡であれば、より使いやすいでしょう。
浴室、洗面所、トイレを1つの部屋にする
バリアフリー対応をさせるためには、
車いすの切り返し対策、手すりの設置など、
どうしてもスペースを確保する必要があります。
しかし、土地の問題で1つ1つを広くしていくことが難しい場合があります。
水回りを1つの空間にしてしまうことで介護の面からも利用しやすい設計となります。
④トイレ
外からも鍵を開けられるようにする
高齢者の場合、万が一の際に助けを呼べないこともあります。
トイレの鍵を外からも開けられるようにしておけば、
救助や介助がよりやりやすくなります。
日常的には、「トイレットペーパーがない」などの場合に対処しやすくなります。
クッションフロアにする
柔らかい素材のため足に優しく、
汚れても拭き掃除がしやすい素材も豊富です。
清潔に保てるためスリッパの履き替えも省くことができ、便利ですよ。
手すり付きのトイレットペーパーホルダーを設置する
リフォームでは手すりとトイレットペーパーホルダーの位置関係が懸念材料となることが多いです。
ホルダー自体に手すりがついているものならば設置場所を決めやすくなります。
廊下の足元に照明を設置する
広い廊下では、夜中にトイレに行く方にとって足元が暗いと不安材料となります。
人感センサータイプのものがお薦めです。
ベッド横に水洗トイレを設置する
「トイレは専用の個室を用意するもの」と考えている方が多いと思いますが、
ベッドの近くに設置することが可能です。
水洗トイレのため、臭いの心配もなく「トイレくらい一人で行きたい」という方のニーズに沿うことができます。
バリアフリーリフォームの相談の仕方
リフォームは大きな買い物です。
特にバリアフリー対応という重要な目的がある場合、
生活を始めてから「こうすれば良かった」という後悔はしたくないはずです。
業者は一般的な問題には対処や提案はできますが、個々の事情まで完全には分かりません。
予算の関係上、家中に希望通りの機能を付けられないことも考えられます。
そのため「今の家にどんな課題があるか」「介護対象者はどんな人か」を明確にした上で、
最大限楽に生活できるよう設計を進める必要があります。この章では、相談の仕方について解説します。
場所ごとにどんな課題があるかを整理する
大切な視点として、洗面台の位置が高い低い、蛇口が固い緩いなどの「設備の使い勝手」、
暗い明るいなど「時間帯による使い勝手の違い」、寒い暑いなど「季節による違い」、「広さ」、が挙げられます。
いつ使うか、どのように使うかを軸に考える必要があります。
介護を受ける人はどんな人かを洗い出す
その人が普段どこにいて何をしているか、を軸に考えることが大切です。
「料理好きで食事を作る時以外にも台所に立つ習慣がある」
「風呂好きで1日に何度も入浴する」
「昼夜問わず何度もトイレに行く」
「握力が弱いため、手すりだけでは立ち座りが厳しい」などがあります。
課題に対処する上で大切なのは、抜けなく、漏れなくです。
洗い出した項目を業者にそのまま伝えてしまうのも1つの方法です。
項目の洗い出しまでできれば、後は相談で十分対応できます。
水回りのリフォーム費用と減税・補助金制度
国や自治体では減税や補助金制度を用意し、
バリアフリー対策や耐震性向上のためのリフォームを支援しています。
減税では「所得税」「固定資産税」「贈与税」「登録免許税」「不動産取得税」が対象となります。
所得税と固定資産税の減税はほとんどの方が受けられるでしょう。
補助金では、「性能向上」(耐震性や省エネルギー対策)、
「三世代同居対応工事」(キッチン、浴室、トイレ、玄関)、
「住宅診断や住宅履歴情報の作成」などが対象となります。
この章では、制度概要について解説します。
減税
対象となる工事は、「バリアフリー」「耐震」「省エネ」「同居対応」「長期優良住宅化」の5つです。
「バリアフリー」では、
トイレの改良、床の材料を滑りにくいものに取り替える、浴室の改良、段差の解消などが該当します。
所得税の投資型では最大20万円、ローン型では62.5万円の控除を受けられます。
固定資産税では3分の1を減額できます。
要件は、工事の実質負担金額が50万円を超えることや、
新築から10年以上経過した住宅であることなどがあります。
所得税の控除対象
1月1日から12月31日までの個人所得に課税されます。制度は3種類あります。
①投資型減税
ローンの利用に限らず利用できます。控除期間は1年間です。
②ローン型減税
5年以上のローンを利用する場合に利用できます。控除期間は5年間です。
③住宅ローン減税
10年以上のローンを利用する場合に適用できます。控除期間は10年です。
固定資産税の減額対象
土地や建物の、1月1日時点の評価額によって課税されます。
リフォームを行った住宅に対して減額されます。
補助金
補助金は国と自治体の事業の2つがありますが、
自治体の方は地域によって違うため、本記事では国の事業について解説します。
また、事業への申請は、施工業者などが行うため、補助金を受け取るのも業者となります。
リフォームを実施する人は、その還元を受けることになります。
制度が複雑で、どのバリアフリーが対象となるかなどの基準は
専門知識が必要となるため、補助金の額や補助対象の把握するにとどめましょう。
国による補助の上限は、250万円を上限に補助対象費用の3分の1となります。
補助対象は、バリアフリー関係では「三世代同居対応工事」(キッチン、浴室、トイレ、玄関)が該当します。
まとめ
バリアフリー対策は生活を楽にするためのものですが、
介護を受ける方の中には「他人様に迷惑をかけたくない」という思いを持っていることもあると思います。
動作を楽にする、事故を防止する、事故が起こっても被害を最小限にする対策によって、
ある程度1人で対応できるようになります。
バリアフリー対応策は多岐に渡りますが、
本記事で紹介した事例や、相談の仕方を参考に、
ご自身やご家族にとって最適なリフォームの方法を選んでみてくださいね。