東京湾には大腸菌がウヨウヨ?あまり知られていない下水処理の現実

必要だけど知らないことが多い下水道のシステム


毎日の暮らしのなかで、お風呂やトイレはだれでも使いますよね。
家庭や施設などで使われた汚水を処理するためのシステムが、下水道です。
生活のなかで下水道のシステムは不可欠です。
しかし、下水道がどんな仕組みで成り立っているのか、意外と知らないものですよね。

下水道のシステムは、海や川の水質にも関わっているんですよ。
下水道の仕組みや下水の処理方法とその特徴、今後の課題などをご紹介します。

お台場周辺での水質の悪さにびっくり!


最近、2020年東京オリンピックに向けて、
トライアスロンのテストイベントが実施されました。

しかし、トライアスロンのスイムのテスト時、お台場周辺の水質が悪く、
基準の2倍を超えるほどの大腸菌が検出されたことがニュースになりました。

どうして海の水質がそんなに悪かったのか、不思議に思った方もいるでしょう。


今回の水質の悪化は、イベント開催前の台風による大雨の影響が大きいと言われています。
天候によって水質が変化するのは、なぜなのでしょうか?
それには東京における下水道の仕組みと関わりがあります。


下水の処理方法を見てみよう


下水道のシステムの基本


まず、下水道のシステムについて、簡単に説明しておきますね。

下水には、2種類があります。
雨天時の雨水と、家庭から出たトイレやふろ場、台所から出る汚水です。
戸建て住宅やマンションなどの敷地内の排水桝で、
排水のなかの不要なゴミを取ってから、排水は地域の排水管へ流れていきます。



下水道のシステムは、以下の3つによって成り立っています。
排出された排水を集めてから、処理場できれいな状態にして河川や海へ戻すという流れが基本です。


①下水道管路網:

汚水や雨水を流すための配水管です。
都市の地下には網の目のような下水道管が張り巡らされています。


②ポンプ場:

下水道管には適度なこう配がつけられているため、
下水道管の位置はだんだん地中深くなっていきます。

あまり地下深くにならないように、
ところどころに設置されたポンプ場で地表近くまで下水を汲み上げて、再び流下させるための仕組みです。


③下水処理場:

下水道管やポンプ場を経由して集まった下水をきれいな状態に処理してから河川や海に戻すための施設です。

下水処理場での処理のおおまかな流れ


実際にどんな処理方法を実施するのかは、地域の人口や処理場の規模などによって変わりますが、
大まかな流れは以下の通りです。
段階をふんで、下水をきれいな状態にしています。


一次処理は、排水のなかの固形物を取り除く処理です。
砂を沈めて除去する沈砂池、泥などを沈めて除去する最初沈殿池などの仕組みで、
下水に混ざっている土砂やごみを除去します。
除去した汚泥は、汚泥処理施設へ送って処理されます。



二次処理では、反応タンクのなかの下水に微生物と空気を送りこみます。
バクテリアが汚れを分解することで、水がきれいになっていく仕組みです。

さらに最終沈殿池で汚れが取り除かれ、処理水と汚泥に分離されます。



高度処理では、有機物と浮遊固形物の除去、窒素やリンなど栄養塩の除去などを行います。
窒素やリンは赤潮の発生原因の一つです。
さらに水をきれいにするために、高度処理の導入が進められているのです。


最後に塩素接触槽で塩素消毒を行い、大腸菌などを殺菌してから、河川や海へ放流しています。
雨水や汚水を処理して放流することで、水を循環させることになるんですね。

下水道管の仕組みには2種類ある!

さて、下水道菅のシステムは主に2種類あります。
合流式下水道と、分流式下水道の2つです。
それぞれの特徴を見ていきましょう。

合流式下水道

汚水も雨水も両方を同じ排水管に流し、下水処理場へ集める仕組みです。

メリットとしては、一本の下水道管で浸水対策と水洗化を行うことができるし、建設費が安めで済むことです。
比較的はやく下水道を作った都市では、合流式で下水道システムを構築したエリアがあります。

デメリットとしては、雨天時に処理しきれなかった汚水が河川へ流れ込むので、
水質の悪化を引き起こすことです。

分流式下水道


雨水は雨水管を通って、河川へ放流し、
汚水は汚水管を通って下水処理場へ集められ、処理されます。
つまり排水の種類によって管が分かれる仕組みです。


メリットは、雨天時でも未処理の汚水が河川に流れることがない点。
一方、デメリットとしては、道路に降った雨水を処理場で処理できなくなる点が挙げられます。

東京都の合流式下水道の問題点は雨天時の水質悪化

東京都では、じつに8割のエリアで合流式下水道を使っているのです。
汚水と雨水を分けずに同じ下水道管で集めているため、水質に影響を及ぼすことがあります。


そもそも下水道のシステムを安く構築できるため、
昭和30年代の東京では合流式を採用したという経緯があります。
(昭和40年代以降になると、多くの都市で分流式を採用するようになりました)

晴天のときには、沈殿処理や生物処理により、
汚水の有機物やリンを除去してから河川へ放流しています。
雨天のときには、一定量までは下水処理場で処理を行います。
しかし、豪雨など雨が多いときには流れ込む水の量が急に増えて、処理能力を超えてしまうのです。

街を浸水被害から守る必要があるため、簡易な処理だけで下水が河川に放流されることになっています。

つまり、東京都では晴天と雨天の日とで水質の差が大きくなるんですね。
また、雨風のせいで水中の汚泥が舞い上がり、大腸菌が広がることもあります。

合流式では水質が心配だ、という意見もありますよね。
ただ今後、東京の下水道を分流式に切り替えるにはかなりの費用と時間がかかると言われています。
激しい雨天のときに、水質が悪化することをどう改善するのかは、今後の大きな課題となっているのです。
 
今回のトライアスロンでのニュースは、下水道のシステムが抱える問題を浮き彫りにしたといえるでしょう。

オリンピックに向けた水中スクリーン


オリンピックに向けて、海水の水質の問題を抑えるための方法もご紹介しますね。

現時点で、トライアスロンのスイムでは、水中スクリーンを使う方法が採用されることになっています。
水中スクリーンとは、長さ約20メートル、深さ3メートルのポリエステル製のスクリーンです。

競技が行われるエリアの海中に3重のスクリーンを設置して、水の流れを遮る仕組みです。
水の流れを遮ることによって、大腸菌群の拡散の抑制につながる、とされています。
ほかにも、特に汚れた下水を貯留する施設の整備なども進められているんですよ。

水辺のレジャーで気になる水質を知る方法

夏になると海や川でレジャーを楽しみたいものですよね。
はたして遊びに行こうと思っている海や川の水質は大丈夫なのだろうか、と気になる人もいるでしょう。
水質を調べたいときには、海や河川がある自治体のホームページで調べるといいですね。


海水浴場の水質を知りたい

多くの海・河川では、
毎年5月から6月、海水浴シーズン前に水質検査が実施されています。
検査項目はふん便性大腸菌群数、化学的酸素要求量(COD)、透明度、油膜の有無の4点です。
海水浴のシーズンには、自治体のサイトで確認するといいでしょう。

自分の住んでいる地域の水質を知りたい


地域の水質も、定期的に水質検査が実施されているんですよ。
地域の河川の水質などは自治体のホームページで公開されているので、
気になるときにはチェックしてみましょう。





まとめ


下水のシステムは、普段は意識しないので詳しく知らないけれど、だれにとっても欠かせないものですよね。
下水道のシステムが、海や河川の水質にも関わっているなんて驚きますよね。
普段から生活のなかで出す排水を極力汚さないことも大切ですので、
この記事が意識づけになると嬉しいです。

また水辺のレジャーの際には事前に水質をチェックしておくといいこともお伝えしました。
楽しく遊ぶためにも、心配事項は前もって確認しておきましょう。