水道水からチッ素が検出…水道水の安全を考える
2021年10月、群馬県にある群馬大附属病院で、異常に高濃度の窒素を含む水道水が検出されました。
この水道水を使用したミルクを飲んだ新生児10人が一時メトヘモグロビン血症を発症したというニュースはショッキングでしたよね。
幸い、症状の出た患者はその後順調に回復し、命に別状はなかったそうです。
ではなぜ、そもそも水道水に高濃度の窒素が含まれていたのでしょうか?
また、今後同じような事故が起こる可能性はどのくらいあるのでしょうか?
今回のブログでは、窒素と水道水の安全について考えてみました。
目次
窒素とは
まず、窒素とはどういったものなのでしょうか?
窒素とは、空気中の78%を占める無味無臭のガスです。
また、タンパク質やアンモニアなどの窒素化合物として自然界に多く存在しており、
生物にとって必要不可欠なアミノ酸の一部でもあります。
窒素は濃度によって危険性が変わる
窒素そのものはありふれた存在であり、また私たち生き物にとって必要なものですが、
その濃度によって危険性が変わってきます。
例えば空気中に含まれる窒素は78%ですが、これが84%を超えると人体に悪影響が出始め、
94%になると2,3回の呼吸で死亡してしまうそうです。
それを知ると少し怖いですよね…。
冒頭でお話しした病院の水道水からは、水道法で定める基準値の約12,000倍にあたる量の窒素が検出され、
一部外来が休止、自治体から給水車が派遣されたということからも、事態の深刻度が伺えます。
水道水に窒素が混入した理由
自然界に多く存在する窒素ですが、どのようにして水道水に混入するのか、という仕組みを解説します。
動物の死骸や排泄物、枯れた植物などは、土壌生物などの働きにより分解されます。
タンパク質からアミノ酸、アンモニアと分解が進み、最終的に「硝酸(しょうさん)」「亜硝酸(しょうさん)」が発生します。
硝酸や亜硝酸には窒素が含まれており、それらの化合物が土壌から地下水へと滲み出ていくという流れです。
冒頭に登場した病院では浄化した井戸水を水道水として使用していたということですが、
この井戸水内に大量の窒素が含まれたまま利用したため、健康被害につながったのではないか、と考えられました。
ところがその後の調査により、病院敷地内の他の貯水槽の水からは、高濃度の窒素は検出されず、
どうやら貯水槽から蛇口までの配管に問題がある、ということが判明。
引き続き、調査が求められるところですが、
このことから推測するに、もともと水道水に含まれていた窒素の量は基準値を大きく上回る量ではなかったということになります。
配管や、その他の給水設備に問題があるとすれば、
・どの部分に問題があったのか
・窒素が異常に増えた原因は何だったのか
・今後、どうすれば窒素の発生を抑えられるのか
という3点がポイントになってくるでしょう。
突発的な出来事だったのか、それとも他に根本的な原因があるのか、今後の水の利用方法を左右するトラブルだと思います。
まとめ
日本に住んでいる限り、無味無臭の水道水の安全性を疑う人はあまりいないことでしょう。
当然のように安全な水を利用できる環境にあって、今回のような出来事があると動揺してしまいますよね。
今回は突発的な事故である可能性が高いですが、再発防止策と、より安全な水道事業への取り組みが求められます。