地震で地面から水が噴き出す!?日本の天災と水道設備の関係

2021年10月、千葉を震源とする地震により、都心では東日本大震災以来となる震度5以上の揺れが起こりました。
これにより電車等の公共交通機関がマヒし、東京では帰宅難民が続出。翌日以降も電車の脱線・運休などが相次いでいましたね。

久しぶりの強い揺れに恐怖心を抱いた方も多かったと思いますが、
大切なライフライン・水道も大打撃を受けたというニュースが流れていました。
道路や水道橋から水が溢れ出る映像は、無性に不安を煽られるものですよね。

地震などにより水道管やその他の設備に問題が生じ、水が溢れる事故は意外と多いです。
今回の地震による被害について深堀しつつ、天災によるライフラインへの影響についてまとめてみました。

漏水原因は「空気弁」の不具合だった!

厚生労働省によると、今回の地震により、水道管からの漏水事故が首都圏を中心に20箇所以上で起こりました。

水道管の漏水と聞けば、水道管の破裂が真っ先に思い浮かびますが、今回の漏水事故は「空気弁」の異常によるものがほとんどだったようです。
水道の空気弁と言われても、聞き慣れないですよね。

水道の空気弁は、配管の内部に設置されており、その名の通り空気の出し入れを行うのが役割です。
空気弁の内部構造はラムネ瓶と、その中のビー玉の関係によく似ていています。

通常、配管内部は水で満たされていて、ビー玉のような球状のフロート(浮き袋)が水で押し上げられ、空気弁の上部いっぱいまで登ってきている状態です。
このフロートが空気弁上部の穴(吸排気口)をふさいでいるため、配管内の水が外に溢れることはありません。
ラムネ瓶でいうと、ビー玉を瓶内に落とす前の状態といえます。

しかし、水の中に含まれる空気が分離して管内に溜まり始めると、水がスムーズに流れなくなるため、空気を外に逃がす必要があります。
すると、空気弁の上部いっぱいに浮かんでいるフロートが、溜まった空気と配管内の水の間に浮き、空気弁上部の吸気口が露出します。
そこから溜まった空気が抜けるといった仕組みです。

逆に、水道管を工事する際には配管内に空間を作るため空気を入れなくてはいけませんから、
今度はフロートを下げることで、配管内に給気することができます。

このように、空気弁内のフロートが鍵となり、配管内の空気の量を調整しているわけですが、
空気の出入り口(吸気口)とフロートは、きっちりと接触することで空気を遮断します。

今回の地震では、このフロートの位置がずれてしまい、吸気口が露出したままになっていました。
そのため、配管内の水が吸気口から溢れ出て、道路が冠水する事態となったのです。

最終的には水道局員が配管内に手を突っ込み、空気弁のバルブを閉めることで漏水を止めました。
フロートがずれてしまった理由は不明のようですが、地震の揺れと何らかの関わりがあったのでしょうか?
今後、詳しく検証されることを願います。

日本の水道管は、耐震構造に変わりつつある

日本の水道管といえば、埋設されてから何十年も経ち、老朽化が進んだものがたくさんあります。
水道管老朽化は日本のひとつの課題といえますが、一方で、新しく更新されている水道管は、耐震性に優れたものが採用されています。

これはミニチュアですが、外からの衝撃に対し、あえて曲がる構造の水道管がメジャーになってきているのです。
地震などの天災が多い日本においては、このように衝撃に合わせて形を変え、衝撃を緩和するタイプの水道管の方が向いていると言えるでしょう。

とはいえ、日本では耐震化していない水道管も数多く埋設されており、今なお現役で使用されています。
今後、どんなタイミングで古い水道管が破裂・損壊してしまうか分かりませんから、耐震性の水道管に交換していくのは喫緊の課題です。

まとめ

地震大国日本にとって、水道などのライフラインが天災により壊れてしまう危険性は、常につきまとう課題です。
もちろん、こういった課題を解決するための技術革新は進んでいますが、
日本の水道管・その関連施設すべてを新しくするには、相当のコストと時間が必要であり、
一朝一夕で実現できることではありません。

設備・施設の進化を待つとともに、万が一の事態において私たちができることも、同時に考えておく必要がありますね。
非常時への備え・知識を身につけ、自分と周りの安全を守れる工夫を続けていきましょう。