日本の下水道管は瀕死状態?対策が必要な下水道の現状

生活する上で必ず出る生活排水を処理してくれる「下水道」は、私たちの生活を支えてくれるなくてはならない存在です。
特に都市部については下水道普及率が100%近くに達しており、おかげで快適な暮らしを送ることができています。

下水道が整備されている一方、設置から長い年数が経過し、安全な利用が危ぶまれる下水道が存在しています。
今回の記事では東京を例に、下水道の現状についてまとめてみます。

実は普及が追いついていない地域も…日本の下水道普及率

「下水道処理人口普及率」という言葉があります。
「行政区域内の総人口に占める処理区域内人口の比率」を百分率で表したものですが、簡単に表現すると「ある区域に住んでいる人の何%が、下水道施設を使用できているか」を%で表している指標です。

日本の下水道処理人口普及率は、実は70%台


公益社団法人日本下水道協会の最新の発表によると、平成30年度末における全国の下水道処理人口普及率は79.3%となっています。

この数字、少し意外ではありませんか?

日本は上下水道の整備が行き届き、ほぼ全ての国民が下水道施設を利用できているというイメージがあると思いますが、実は普及率でいうと80%弱なのです。
(震災の影響で、福島県の一部市町村が調査対象外になっています)

下水道が整備されていない地域の排水はどう処理されている?


特に人口5万人未満の市町村では、下水道をはじめとする汚水処理施設を利用できず、生活排水がそのまま河川に流れているのが現状です。
日本下水道協会によると、こうした生活を送っている国民が、約1,100万人いるそうです。

都市部はほぼ100%の普及率を実現


一方、東京をはじめとする都市部では、ほぼ100%に近い下水道処理普及率を達成しています。

例えば、普及率の高い都道府県として

東京…99.6%
神奈川県…96.8%
大阪府…96.0%
京都府…94.7%

などが挙げられます(平成30年度時点)。

また、これらの地域の中でも政令都市は特に普及率が高く、

大阪市…100%
東京23区、横浜市、北九州市…99.9%
札幌市…99.8%

となっています(平成30年度時点)。

普及率は高いが…下水道の寿命が迫っている!

都市部の下水道普及率の高さは安心できるものですが、もうひとつ考えておかなくてはならないのが、下水道の寿命です。

下水道管の寿命は約50年と言われています。

日本の下水道管の総延長約47万キロメートルのうち、約1.4万キロメートルが法定耐用年数を超えているのです。

政令都市のような都市部では、早くから下水道が設備されました。
普及が早かった分、寿命を迎えた下水道管も多くあるということです。

東京都武蔵野市の場合

東京のベッドタウンとして人気で、約15万人の人口を抱える東京都武蔵野市を例に挙げてみましょう。

武蔵野市の下水道は昭和27年度から事業が本格化し、昭和40〜50年代には集中的に下水道整備が進められました。
そして昭和62年度には普及率100%を達成し、現在、市の下水道管の総延長は314kmです。

早い段階で下水道管が普及したため、現在、標準耐用年数の50年を経過した下水道管は約80km、全体の25%に及んでいます。

また、昭和42〜52年のあたりに敷設された下水道管約180〜190kmが、使用から30年以上経過しており、前出の80kmと並んで老朽化が進んでいると言えます。

下水道管の老朽化で起こるトラブルとは?


都市部を中心に進む下水道管の老朽化ですが、一体どのようなトラブルを引き起こしかねないのでしょうか。
代表的な不具合は「道路陥没」「下水道管の破損」です。

道路陥没は年間◯千件!

下水道管が老朽化すると、地盤がゆるみます。古くなった下水道管内に土が入り込み、道路が陥没してしまうのです。
こういった下水道が原因の道路陥没は全国で年間3,000〜4,000件発生しており、早急の対応が必要とされています。

下水道管の破損

老朽化した下水道管が破損し、その破損箇所から汚水が漏れ出てしまうことがあります。
正常に汚水を流せず、周囲に汚水が染み込んでしまうのです。

下水道管の老朽化にストップをかける!自治体の対応

都市部の下水道管がうまく機能しなくなると、私たちの生活全体が停滞してしまいます。
各自治体は下水道の再整備に向けて動き出し、国もこの動きを後押ししています。

例えば、上述の東京都武蔵野市では「下水道ストックマネジメント計画」を策定。
国庫補助金の交付を受けながら、下水道の点検・調査・修繕・改築を進めています。

補助金に加え、下水道料金の改定(値上げ)によって下水道施設の再整備を進める予定です。

まとめ

社会インフラが整い、快適な暮らしが実現できる日本。
私たちの生活を下支えしてくれている下水道設備は、今大きな転換期を迎えています。

インフラの整備には大きな財源が必要です。
多くの人口を抱え税収の多い地域ですら、下水道料金の値上げに踏み切っていることを考えると、これから日本のあらゆる地域で上下水道料金のアップが予想されます。

私たちは、インフラ整備を自治体任せにするのではなく、下水道の利用者としての立場を考え協力していく姿勢が求められているのではないでしょうか。