【日本の下水道管事情】下水道更生工法をご存知ですか?

水道は、大きく上水道下水道に分けられます。
上水道は、私たちが生活用水として使用する水の道(水道管など)、下水道は私たちが排出した汚水が流れている場所ですよね。

水道管をはじめ、水が通る管は経年劣化によって必ず寿命を迎えます。
古くなった管を新しくすると聞くと、管を掘り起こして新しいものと入れ替えるやり方が思い浮かびますよね。

こうした方法もありますが、今は地面を掘らずに工事ができる「更生(こうせい)工法」と言うやり方があり、その方法にはたくさんの種類があるんです。

下水道の更生工法

古くなった下水道管は定期的に新しくする必要がありますが、通行止めにして道路を掘り、古い部分を入れ替える工事はコストがかかり、また周囲環境・地域住民への影響も大きいのがデメリットです。

そうしたデメリットを解消するのが、道路を掘らずに下水道管を新しくする「更生工法」というやり方です。
更生工法は2つのタイプに分けられ、それぞれのタイプの中でもさらに細分化されていきます。

①製管工法

1つめのタイプが「製管工法」と呼ばれる工事方法です。
製管工法を簡単に説明すると、既存の管の内側に塩化ビニル材を貼りつけて複合管とし、古い管の中に新しい管を作るイメージになります。

製管工法には、

・SPR
・パルテムフローリング
・3Sセグメント

といった工法があります。

SPR工法は、ヒモ状の塩化ビニルを下水道管内に入れ、下水道管の形に合わせてコイルのようにくるくる回しながら内側を巻いていきます。

パルテムフローリングは、鋼でできた部材をを既存の下水道管の中でリング状に組み上げ、モルタルで強度を出します。

最後に3Sセグメント工法ですが、これは塩化ビニルの曲がる板を既存下水道管内で組み上げ、充填剤で固める方法です。

どの方法も、既存の管の内側において、変形可能な素材と充填剤を敷き詰め、新しい下水道管を形成する方法といえます。

②反転・形成工法

もう1つのタイプは「反転・形成工法」と呼ばれる工事方法。

・インパイプ
・パルテムSZ
・SGICP-G
・オールライナーZ
・FFT-S
・シームレスシステム
・オメガライナー
・EX

などの工法に分かれます。

「反転・形成工法」は、多少やり方に違いはあるものの、おおむね次のような方法です。

①筒状の更生材を既存の下水道管内に入れる
②筒の中に空気や水を通して、筒を下水道管の形に合わせる
③筒が膨らんだ状態で、温水や蒸気で更生材を硬め、新しい更生管とする

筒状の更生材は、最初反転した状態で下水道管に入れ、膨らませます。
そのため「反転」工法なのですね。

「製管工法」が下水道管の中で新しい管を組み立てていくイメージならば、
「反転・形成工法」は最初から筒の形をした膜を膨らませ、新しい管に仕上げるイメージです。

製管工法のメリットとは?

このように、下水道管の更生工法は多岐に渡ります。
どの工法にせよ、道路を掘らずとも下水道管の更生が可能なので、コストが大幅にカットされます。

私は、「製管工法」のSPR工法で更生された下水道を見たことがあるのですが、下水道管の汚水をせきとめたりすることなく、通水したまま施工が可能で、かつ下水道管の形状が四角でも円でもOKなのがメリットです。

下水道の更生工法を実際に目にする機会はあまりないとは思いますが、東京都江東区にある「虹の下水道管」にて、SPR工法の実物サンプルが展示されています。

興味がある方はぜひ訪れてみてくださいね^^

まとめ


国土交通省によると、令和元年度末における日本の下水道管総距離は約48万km。
標準耐用年数50年を超えた下水道管は、20年後には全体の35%を占めると計算されています。

国土交通省・参考記事(外部リンク)

私たちの生活に欠かせないインフラである下水道管を、いかにコストを抑え、安全に使い続けるかは国全体の命題なのです。
下水道更生の方法を知るとともに、こうした日本の現状を知っておくのも、良い勉強になりますよね^^