ダムの役割と仕組み〜安全で快適な暮らしを守るために〜

水を溜めているだけじゃない!あまり知られていないダムの役割


ダムと聞くと、水をたくさん溜めているといったイメージがありますよね。
社会科見学や観光でダム見学をされた方も多いと思います。

最近の台風被害のときに、ダムの役割が改めて注目されました。

日本は梅雨や台風などで短期間に集中してたくさんの雨が降るので、水資源の量に偏りがあることが特徴です。
年間を通じて限られた水資源をうまく使っていくには、ダムなどに水を溜めてバランスよく使う仕組みが必要なんです。

あまり知られていないのですが、ダムにはどんな役割があるのでしょうか?
意外と身近で役立っている存在なんですよ。
ダムの特徴や役割、今後の課題などをご紹介します。



主なダムの種類を見てみよう


ダムの種類には大きく分けて、コンクリートダムフィルダムがあります。
ダムを建設する場所の地質や地形に合わせて、もっとも適したタイプのダムが選ばれています。


コンクリートダム:コンクリート製のダム



重力式:台形状のコンクリートダムで水圧を支えています。
日本のダムの9割程度を占めるタイプです。


アーチ式:アーチ型に湾曲させたダムです。

ダムに厚みがないので、材料のコストが少なくなりますが、水圧に耐えられるほどの強固な岩盤があるエリアでないと建設できません。
作れる場所が、ある程度限られているタイプです。

フィルダム:土や岩石で作るダム

土や石を積み重ねて建設するダムです。
資材の運搬が大変なので、周囲に原料になる岩石などが豊富にある地域で建設されることがあります。

複合ダム


また、重力式とアーチ式、コンクリートダムとフィルダムなど、複数の方法を組み合わせた複合ダムもあるんですよ。
地域のダムがどんなタイプのダムか、調べるのもいいですね。

ダムと堰(せき)との違いは高さ!

川の流れをせき止める建築物と言えば、ダム以外にも堰(せき)がありますね。
両方の違いは高さにあるんです。
高さが15メートル以上あるものをダムと言います。

ダムを建設できる場所は、河川の上流で山間部といった場所が多いですよね。
巨大なダムをつくることで、どんなメリットがあるのか、見ていきましょう。

ダムが果たす2つの役割


日本は水が豊富なイメージがありますが、雨が降るのは梅雨と台風の時期に集中しています。
山地が多く河川の流れが急なので、降った雨が川から海に向かって短期間で流れていくことが特徴です。
意外と使える水資源は限られていて、降雨量が足りないと水不足、多すぎると洪水などが起こりやすい傾向となっています。

日本には長年にわたって、水の利用に苦労してきた歴史があります。
ダムの建設も、日本での水資源の活用のひとつの方法です。

ダムの役割には、大きく分けて2つがあります。


・利水(りすい):ダムに溜めた水を使って農業や工業、発電などに使う

・治水(ちすい):ダムの空き容量に水を溜めて洪水の調整を行う


1年の間に、降水量が多い時期はある程度決まっていますよね。
1年を通じたダムの運用パターンとしては、雨の多い7~9月はダムにわざと空きを作って洪水に備えています。
逆に10月から6月にはダムに水を溜めておき、必要に応じて放流することで、農業や工業のために有効活用しているのです。





利水:水資源を有効活用する!

2つの役割のうち、まずは利水について詳しく見ていきましょう。

水の安定した供給に役立つ


季節にかかわらず必要な量の水を使えるように、ダムには水を安定して供給する役割があります。
雨が多いときにはダムに水を溜める一方で、水が少ない時期には川に水を流すことで、下流で使用できる水の量を調節しているんです。


工業用水や農業用水にも大量の水が必要ですが、ダムを使って水量を確保することで、
雨が少ない時期でも、水を供給できるようになっています。
人口が多く水の需要が多い都市部などでは、特に安定供給のためにダムが果たす役割は大きいです。


他にも、河川の水が少ない時期にダムから水を流すことで、船の通行を妨げないなどの効果もありますよ。

水が落下する勢いで電気を作る!


ダムには大量の水がありますが、電力を生み出すことにも使われています。
高所から水が落ちるときに、発電機と連結された水車を回して電力にしているんです。

発電に使用された水は河川から海に流れ、いずれ蒸発して雨雲になり、また雨となって地上に降ることになります。
二酸化炭素などを排出しないし、再生可能なエネルギーとして知られています。



治水:大雨に備える!

次に、治水について考えてみましょう。


洪水を防ぐための水量の調整


日本では、梅雨や台風など決まった時期に大量の雨が降りますよね。
集中した雨量のせいで、しばしば水害を引き起こすことがあります。

降った雨の量がそのまま下流に流れると大洪水になる恐れもあります。
そこで、雨水をダムに溜めることで下流に流れる水の量を調整しているんです。
ダムは洪水被害の軽減にも役立っています。

例年、降水量が多い夏の間には、あらかじめダムの水位を下げて空間を空けているんですよ。
そして、洪水時にはダムが満杯にならないようにしながら水位を調節しています。

また洪水の後にも、次の洪水に備えて、ダムの水位を下げるために放流することもあります。
時期や降水量に応じて、柔軟に水位を調節しているというわけです。



ダムには問題点や弊害があるの?

毎日の暮らしで水を使っていくうえで、ダムが役に立っていることがわかりますね。
ただ、ダムの建設にはお金も時間もかかります。
そしてダムの問題点には、建設する地域への影響や自然環境に与える変化も挙げられます。

ダムを建設できる場所は、川の上流地域など、場所が限られています。
ダムを建設する以上、特定の地域を水没させることになりますよね。
住み慣れた土地から立ち退きを余儀なくされる人たちが出ます。
地域のなかで、ダム建設をめぐって賛否が分かれて対立が生じることもあります。



ダム建設によって、もとの河川の流れが変わり、古いダムの底にはヘドロがたまって水質悪化を招くことも問題点となっています。
ダム建設による周囲の生態系への影響もあり、生き物が生存できる環境が従来とは変わってしまったことも指摘されているのです。
魚類の絶滅リスクが高くなるなど水辺の生き物への影響が大きいのですが、魚を主な餌にする動物への影響も考えられます。

また、
長年の使用によって、ダムのなかに土砂がたまっていくことを堆砂(たいさ)といいます。
土砂がたくさんたまると、貯水量が減ることになるので、ダムの管理のひとつとして堆砂への対策も必要です。
底にたまった土砂を取り除いたり、貯砂ダムを設置したりするなど、ダムを長生きさせるための取り組みも進められています。


水の使用の増加にともなって、どうしてもどこかに負担をかけてしまう現実があります。
ダムは確かに水資源の確保に役立っているのですが、建設にあたっての地域への負担や、環境への影響やその対策にも注目しておきたいですね。

ダムを見てみたい!見学ツアーが人気

ダム周辺は公園や遊歩道が整備され、憩いの場になっていることもあります。
ダムについてもっと知りたいという人のために、見学ツアーが実施されていることもあるんですよ。

たくさんの水をたたえたダムの雄大な景色は人気の観光スポットで、
ダム貯水池から水が放流される様子を眺めたり、資料館に行ったりすることができます。
お住まいの地域にダムがあったら、行楽で行ってみるのもいいでしょう。

まとめ

日本においては、
季節によって雨の降りかたに差があるので、水資源を有効に使うには工夫がいります。
ダムは水資源の確保になるだけでなく、洪水対策にもなっているんですね。
普段はあまり実感がなくても、実は役立っている存在なのです。
水はみんなが毎日、使うものなので、水の供給の仕組みにももっと関心を持ちたいですね。