貯水槽はこんな仕組みになっている!受水槽・貯水槽の管理・清掃の方法

意外と知らない?貯水槽はビルでの水の供給に役立つ設備

マンションや病院などの大型の建物内では、水を届けるために貯水槽が使用されていることが多いです。
屋上などに水を溜めるタンクが付いているのを見たことがあるひともいるでしょう。

貯水槽によって、大きなビルや建物にも安定して水を供給することができるため、
目立たないながらも実はとても大切な設備なんですよ。
貯水槽のメリットとデメリット、管理や掃除の方法、
水質の異常に気付いた場合の対処法などをご紹介します。

大型ビルで役立つ貯水槽の役割


大量の水を使用する施設で、水道本管から届く水を溜めておくための設備が、貯水槽です。
マンションや病院、学校や工場など、大型の建物の屋上や横に水を入れたタンクが設置されていることが多いですよね。



もっとも一般的な設置方法としては、地上の受水槽に一時的に水を溜めてから、
さらにポンプで屋上の高置水槽まで汲み上げ、各戸の利用者に供給するタイプです。

水道本管からの水を溜めておくための受水槽、
圧力をかけるポンプ、高置水槽、管道など
必要な設備の全てをまとめて、貯水槽水道といいます。

貯水槽水道を使うことによって、大型のビルなどでもスムーズに水道を使えるようになっているのです。
とりわけ病院など、災害時にも水の確保が必要な施設では、貯水槽方式が適しています。

水道本管の水質は地域の水道局が管理しますが、
貯水槽に入ったあとの水の水質は、貯水槽の設置者に管理する責任があります。

設置者とは、基本的には建物のオーナーが多くなります。
集合住宅の場合は、管理会社が受託することも多いですね。





上水道のしくみを知っておこう

ここで、上水道の仕組みについて、ご紹介しますね。
大きく分けて、貯水槽方式と、直結給水方式があります。


貯水槽方式


地域の水道本管から届く水を一度、溜めておくための受水槽を設けている方式です。
その後さらにポンプで水を蛇口まで送ります。

短時間に大量の水を使う建物や、
高い階にまで水を供給するには水圧が足りない場合に有効な方法です。



メリットとしては、高い階にも安定して水を供給できる点や、
断水時や災害時でも水を確保しやすい点があげられます。
特に病院、ホテル、学校など、常時水が必要な建物に適している方法ですね。

デメリットとしては、貯水槽の衛生管理が不十分な場合に水質の劣化の恐れがある点です。
防止するためには、貯水槽の清掃やメンテナンスが必須になります。
最低でも年1回以上の清掃が必要となっています。

設置費用や維持管理費がかかる点や、設置スペースが必要となる点も、デメリットです。

直結給水方式


水道本管の水を直接、各戸の蛇口まで供給する方法です。
一般的な戸建て住宅では、直結給水方式が採用されています。

さらにここから、建物の高さによって2種類の方法に分かれます。

①直圧直結給水方式

直圧直結給水方式は、3階から4階建ての建物で採用できる方法です。
配水管の圧力で各戸まで水を供給してくれます。

②増圧直結給水方式

さらに高層の建物になると、増圧直結給水方式を採用します。
配水管の圧力だけでは不十分なので、増圧ポンプを利用して水を供給する仕組みです。



直結給水方式のメリットは、いつでも良質な水を使えることですね。
貯水槽を置かないので省スペースだし、定期的な点検や清掃も不要になります。
仮に増圧ポンプを設置するとしても、狭いスペースでも設置できます。


デメリットとしては、水道工事や震災などの断水した時に水が使用できなくなる点があります。
また増圧ポンプを設置した場合には、ポンプの点検・清掃が必要です。

両方を使う併用方式


かなり大規模な施設では、低層階は直結給水方式、高層階を貯水槽方式と、
同じ施設内で給水設備を併用する方法が採用されることもあります。
両方のいい点を利用できますね。

直結給水方式への切り替えが勧められている


近年、直結給水方式にすることが行政から推奨されています。
切り替えることができそうな建物なら、検討してみるのもおすすめです。

直結給水方式にするかどうかは、建物の所有者が判断することになります。

ただし、建物によっては直結給水方式が認められないこともあります。
例えば断水した場合に影響が大きいホテルや病院では、貯水槽方式のほうが適しています。

また薬品等の危険な化学物質を取扱う工場や研究所であるために、直結給水が認められないケースもあります。
具体的には、クリーニング工場や石油を扱う工場、食品加工工場などです。

きれいな水のために欠かせない!貯水槽の管理・清掃


貯水槽の管理の基準


貯水槽を、どんな法律の規制を受けて管理することになるのかは、
水槽本体部分の有効容量によって分かれています。

10立方メートルを超える場合は簡易専用水道

有効容量が10立方メートルを超える場合は簡易専用水道として、水道法の規制を受けます。
違反した場合には、罰則もあります。

1年以内に1回は、貯水槽の清掃を行うことが義務となっており、
また定期検査についても、厚生労働大臣の登録を受けた検査機関に依頼して、やはり1年以内に1回は受けないといけません。

給水栓における水質検査も定期的に行われます。
透明なコップに水を入れ、色や臭い、味をチェックしたり、残留塩素を測定したりするのです。
もし異常があれば、水質検査機関に検査を依頼することになっています。

万が一、供給する水による健康被害の恐れがある場合には、
給水を停止して、水道の使用者に知らせることになっています。

10立方メートル以下の場合は小規模貯水槽

一方、水道
10立方メートル以下の場合は、小規模貯水槽水道という扱いになります。
水道法の規制は受けないものの、県や市の条例による規制を受けて、
簡易専用水道に準じた清掃や定期検査が必要になっています。





貯水槽の掃除と手順


貯水槽の掃除を怠ると、トラブルになることがあります。
例えば、

・通気管から空気が出入りして水質が悪化する
・水道管内部の錆が水の中に流入する
・水垢が発生する

などです。
毎日使う水なので、困りますよね。


貯水槽をきれいに保つには、定期的な清掃が欠かせません。
衛生面の知識や技術が必要なので、貯水槽清掃業者に依頼するのが一般的です。

掃除の方法や手順は、以下のようになります。


貯水槽清掃の流れ
貯水槽とその周辺のパイプやポンプ類の点検
⇒排水してから貯水槽内の壁面や床面を掃除
⇒消毒液で内部を消毒
⇒水洗いしてから水を入れる
⇒水質検査および残留塩素の測定を行う

といった流れになります。

定期的な掃除やメンテナンスのおかげで、
みんながきれいな水を利用できるんですね。





貯水槽のトラブルの例

貯水槽は普段はあまり意識しない設備なので、
管理や点検が不十分だとトラブルになることがしばしばあります。


管理不足は、水質の劣化につながります。
外壁塗装の劣化によって光が入り込むことで水質が悪くなった例もありますし、
受水槽の亀裂から土砂や昆虫が侵入するケースも起こります。
菌が繁殖すれば食中毒の発生もあり得ますよね。

衛生のためには定期的な点検が欠かせないのです。



まれに貯水槽にだれかが異物を入れるイタズラが起こることもあります。
水質に異常が出てから入居者が気づく、というケースもあるんですよ。



もし味や臭いがおかしい、色が変だといった水質異常を感じたら
最寄りの水道局や保健所へ相談することが必要です。
マンションなどの入居者は、まず貯水槽の設置者や管理組合、管理会社などに相談するといいですね。



まとめ


普段はあまり意識することはないですが、貯水槽は日常使う水の質にかかわる大切な設備です。
貯水槽の管理者には、適切な管理を行う責任があるので、
いまいちど貯水槽の管理やメンテナンスを考えてみるといいですね。

また水道の利用者も、水質の異常に気づいたら速やかに連絡、相談しましょう。
安全できれいな水を使い続けたいですね。