線状降水帯って何?日本を襲う豪雨被害と防災対策

2020年の梅雨、九州・東海地方を中心に、大雨による甚大な被害が出ています。
被災された方のご無事と、一日も早い復興を心からお祈りいたします。

さて、ここ数年、毎年のように日本を襲う水の災害。
大雨や台風、それに伴う土砂崩れ、河川の氾濫など、多くの方が大変な被害にあわれています。

そんな中、最近よく耳にする「線状降水帯(せんじょうこうすいたい)」という言葉。
聞き慣れない言葉ですが、一体何なのでしょうか?
そして水害が増えている日本で、私たちが気をつけなくてはならないこととは何でしょうか?
改めて考えてみましょう。

線状降水帯とは一体何?

今回の九州地方・東海地方を中心とした豪雨被害や、記憶に新しい2019年の「西日本豪雨」など、梅雨の時期の豪雨被害を引き起こす原因となっているのが「線状降水帯」です。

「今までに経験したことがない」「数十年に一度」「観測史上最も多い降水量」など、予測不能な事態を招く線状降水帯とは一体何なのでしょうか。

線状降水帯とは

ウィキペディアによると、線状降水帯とは…

線状降水帯とは
次々と発生する発達した雨雲が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50〜300 km程度、幅20〜50 km程度の強い降水をともなう雨域である。

と書いてあります。

強い雨をもたらす積乱雲の帯が、線状に伸びている様子を指すのですね。

線状降水帯によって雨が長引く理由

ひとつひとつの積乱雲に着目すると、その寿命は1時間程度です。
ひとつの積乱雲だけで甚大な被害につながることはありませんが、(ニュースでよく聞く)「暖かく湿った南風」の影響で、ひとつの積乱雲の後ろにすぐ次の積乱雲が形成され、どんどん積乱雲が連なっていくと、積乱雲が連なっていくようになります。

1時間前に形成された積乱雲が衰えてくる頃には、すでに後ろに新しい(威力の強い)積乱雲が出来上がっているのです。

こうやって形成された積乱雲の線(線状降水帯)は、西から東へ移動していきます。
天気予報の雨雲の様子を観察すると、帯状に伸びた積乱雲の列のうち、強い勢力を持つ成熟した積乱雲(帯の真ん中くらい)の場所で大雨が降っていることが分かります。

なぜ線状降水帯は日本に停滞しているの?

非常に強い雨をもたらす線状降水帯ですが、どうして日本列島に停滞しているのでしょうか。

理由は「黄海高気圧」「太平洋高気圧」に挟まれて、梅雨前線の南北の位置が固定されてしまっているからです。

固定された梅雨前線と、形成され続けていく積乱雲の列…この条件が重なり、九州を中心とした地域で豪雨被害が出てしまっています。

日本の豪雨災害が増えている

近年、日本の気候災害・豪雨被害の増加は、ニュースや新聞で知るまでもなく、誰もが肌感覚で知っていることでしょう。

規模の大きな豪雨災害の原因は地球温暖化に伴う海面の温度上昇と考えられます。

海面温度の上昇により日本の南に抑え込まれた前線が、毎年の豪雨被害につながっているのです。
温暖化の進行に伴い、今後も日本では「今までに経験したことのないような」レベルの災害が増えてくることが予想されます。

豪雨災害の被害者にならないために

今後も増加していくであろう豪雨災害。
豪雨の発生は避けられなくても、豪雨の被害から身を守ることはできます。
ここからは、豪雨災害の被害にあわないため、私たちができることをまとめていきます。

①危険な場所に近づかない


災害が発生したとき、一番大切なのは「危険な状況・場所から距離をとる」ことです。
豪雨災害が起こったときによく聞くのが「川(や用水路など)の様子を見に行って流された」という言葉ではないでしょうか。

自分の管理している土地の様子が気になって、確認のために出かける人もいれば、単に好奇心から危険に近づく人もいます。
しかし、自らを危険な場所に近づける行為は絶対にやめましょう。

②早めの避難を心がける

気象庁や市町村が発表する災害の警戒レベルは、レベル1(最も低い)〜レベル5(最も高い)の5段階に分かれています。

警戒レベル
レベル1:災害への心構えを高める
レベル2:避難行動の確認(ハザードマップ等)
レベル3:危険な場所から高齢者等は避難
レベル4:危険な場所から全員避難
レベル5:命を守るための最善の行動をとる

その時々の状況にあわせ警戒レベルは上下しますが、線状降水帯による被害の特徴は「被害が一極集中する」点にあると思います。
「隣の市が大丈夫だから、自分の住んでいる市も大丈夫」という発想ではなく、あくまで自分が住んでいるピンポイントの場所の状況がどうかにより、行動を決める必要があるのです。

市町村や気象庁のレベル分けは、あくまで大局的に見た判断であることが多く、細かな番地・村・町レベルの状況は、住民が自分自身で判断する必要があると言えます。

加えて、線状降水帯からくる大雨の被害の特徴は「進行が早いこと」です。
被災された方のインタビューを聞いていると、「避難しようと思ったら、家の外まで水が来ていて逃げられなかった」「あっという間に水かさが増した」と仰る方が多いのが印象的でした。

仮に現在の警戒レベルが高くないからといって、1時間後も同じ警戒レベルとは限りません。
また、今は大した水かさでなくても、ものの数分で家が浸水するほどの水量になる可能性もあるのです。

災害時は警戒してし過ぎることはないので、警告レベルに関わらず、避難した方が安心と思うならば、早めに避難した方がよいでしょう。

③情報収集を怠らない

刻一刻と変化する状況をきちんと認識しておきましょう。
テレビでも構いませんが、気象庁のHPやお天気アプリなど、自分が住んでいる地域の情報がピンポイントで得られる情報源を持っておくことが重要です。

気象庁HP

停電すればテレビやパソコンは使えませんし、スマホの充電もできなくなります。
複数の情報源を確保し、最新の情報を収集できる態勢でいましょう。

防災対策(普段からできること)

災害下で安全な行動を取れるかどうかは、普段の準備にかかっているともいえます。
いつ何が起こっても冷静に行動できるように心がけましょう。

①防災グッズを準備する

東日本大震災以降、家に防災グッズを常備する家庭は増えたのではないでしょうか。
「数年前に準備して以来、中を確認していない」という方は、この機会にもう一度、中身を確認してみましょう。

・保存食の賞味期限や電池の使用期限は大丈夫でしょうか?
・スマホの充電バッテリーが、機種変更で使えなくなってはいませんか?
・買ったはいいものの、使い方が分からないグッズ(簡易トイレなど)はないでしょうか?

1年に数回、自分の誕生日や年末年始など、「この日に確認する」という日を決めて、防災グッズの見直しをしてみてくださいね。

②ハザードマップを確認する

自分の住んでいる地域が災害にあったとき、地域の避難施設がどこにあるかを把握していますか?また、災害時に近づくと危険な場所(川の近くや土砂崩れの心配がある場所など)を知っているでしょうか。

災害下で悠長にハザードマップを広げる余裕はありません。
平時にじっくり見て、避難場所や家族との集合場所を話し合っておきましょう。
休みの日を活用して、避難場所に実際に出かけてみるのもおすすめです。

③近隣との関係性を築いておく

地方に行けば、近隣住人同士の結びつきが強く、もしものときも助け合える関係性が育まれていることが多いです。
しかし、東京などの都会では「マンションの隣の部屋に誰が住んでいるのか分からない」なんてことは珍しいことではありません。

災害時には自力だけでなく、近隣同士の助け合いが大切です。

・お手伝いの必要なお年寄りや、体が不自由な人はいませんか?
・もしものとき、離れて暮らす家族へ自分の代わりに連絡をとってくれる人はいますか?
・地域の避難訓練には積極的に参加していますか?

災害時に助け合える関係性は、普段から少しずつ育むものです。
困ったときはお互い様で助け合えるよう、挨拶や簡単な会話で自分たちの素性を把握しあっておくと、いざというときに心強いものです。

まとめ

年々災害が増えている日本。災害以外にも、新型コロナウイルスの流行など、新しい脅威にさらされることが多くなってきました。
もしものときに正しい行動が取れる自分でいること、また、周りと助け合える自分でいることが、これからの生活のあり方として大切なのではないでしょうか。
一旦事態が落ち着くと、つい気が緩んでしまうのが災害対策です。自分と大切な家族を守れるように、日々の備えと正しい知識を身につけておきましょう!