井戸ポンプのトラブル、考えられる原因と対処法
井戸と聞くと、古臭いイメージを持たれたり、
とっくの昔に使われなくなっていると思っている方も多いかもしれません。
しかし、井戸水(地下水)は今でも大切な水資源として活用されています。
昔ながらの汲み上げ機を使っているご家庭もあるんですよ。
生活用水として井戸水は大切な存在。
ガーデニングに洗車、掃除やトイレの洗浄水など、
井戸のあるご家庭にとってなくてはならないものです。
そして井戸に欠かせないのが井戸ポンプ。
日頃何気なく使っている設備、壊れないのが当たり前と思ってしまいがちです。
もしものときに慌てないよう、トラブル事例別に原因と対応をまとめました。
ぜひ参考にして、大切な井戸を長く使ってくださいね。
目次
井戸ポンプについて
まずは井戸ポンプについて詳しく説明しましょう。
井戸ポンプの仕組み
井戸ポンプの仕組みや構造は、知っているようで知らないもの。
せっかくの機会に勉強しておきましょう。
井戸ポンプの基本的な仕組みは、コップに入った飲み物をストローで飲む仕組みと同じです。
私たちがストローを吸うと、ストロー内の空気が吸われて真空状態が作られます。
この真空状態と大気圧の働きによって飲み物が上へと上がっていくのです。
ポンプの基本原理は、この「吸い上げ」現象と同じです。
これに加えて、ポンプには「押し出し」という働きも深くかかわっています。
押し出しは、水鉄砲の水が勢いよく飛び出すことをイメージするとわかりやすいですね。
細長い水鉄砲の内部で、ピストンによって水が押し出されて噴射するという仕組みです。
井戸ポンプの基本構造は、この「吸い上げ」と「押し出し」の組み合わせによってできています。
なんだか井戸ポンプがとても身近なものに感じられますね。
耐用年数
気になる井戸ポンプの耐用年数ですが、
実は、耐用年数は井戸水の水質や井戸の状態に大きく左右されます。
井戸水とは地下水、自然が生み出した水ですから、地域ごとに多様な水質があるもの。
人間にとっておいしい水が、機械が動くのに適した水とは限りません。
水に含まれる成分によっては、ポンプの寿命を縮めてしまうこともあるのです。
例えば、砂の混じりやすい井戸は、
機械であるポンプにとっては好条件とはいいにくい場合もあります。
このようにいろいろな条件があるため、耐用年数を一概に決めることができないのです。
ポンプに適した条件であれば、10年から15年稼働するケースもあります。
中には20年、30年と動き続けているご長寿ポンプもあるという話です。
続いて、井戸ポンプにありがちなトラブルをご紹介しましょう。
トラブル1:モーターは回っているが水が出ない
ひとつめは、モーターは動いているのに、肝心の水が出ないパターンです。
呼び水がなくなっている
井戸ポンプのトラブル事例で最も多いものが、水が出ないこと。
さらに水が出ない原因としては、呼び水がなくなっている場合がほとんどです。
モーターが回っているのに水が出ない場合、まず呼び水を確認することをおすすめします。
モーターが回っているかどうかは、ブーンという低い運転音が聞こえるかどうかで確認することができます。
呼び水とは、ポンプを作動する前に入れる水のことです。
なぜくみ上げる前に、別に水を入れるのだろうと不思議に思いますよね。
冒頭のストローの例では、飲み物は真空状態で吸い上げられ、飲むことができましたよね。
この真空状態を作るために、ポンプには呼び水が必要なのです。
呼び水がなくなり空気に接していると、真空ではなく気圧のはたらきを受けるため、水はポンプアップされません。
呼び水によって空気が抜き取られ、真空状態となることでくみ上げることができるようになります。
もし呼び水を満タンに入れても水が出ない場合、別の箇所に問題があるものと思われます。
その場合は専門の修理会社に相談しましょう。
トラブル2:冬場になると水が出ない、出にくい
次に、寒い冬になると水が出なくなるというケースです。
地下水位の低下による場合
夏場は水が出るのに、冬になると水が出るまでに時間がかかったり、出なくなったりするケースもあります。
この場合は、井戸の水位に原因があることが多いです。
地下水である井戸水は、一般的に夏に多く冬に少なくなる傾向があります。
その年の雨量や地域によっても異なりますが、冬は水位が下がることが多いようです。
そのためポンプが水をくみ上げる高さにまで地下水が達していないと、
水が出ない、出にくい状況になってしまうのです。
この場合は井戸ポンプの故障ではないため、ポンプを修理する必要はありません。
対処方法としては井戸をより深く掘るなどがありますが、掘削のための費用が発生します。
どうしても改善したいという方は、コストと相談するとよいでしょう。
凍結による場合
冬場に井戸の水が出ない場合、配管などの凍結も原因として考えられます。
井戸水そのものが凍ることはほとんどなく、
多くは住宅内部へ引き込むための配管の凍結に起因します。
もちろん通常は、配管には断熱材が巻かれています。
経年によってこの断熱材が破れるなどすると、大寒波の際などに配管が凍ってしまいます。
その結果、水が出なくなってしまうのです。
この場合も井戸ポンプの故障ではないため、ポンプの修理は必要ありません。
対処方法としては、
配管の断熱材を巻きなおすこと、
そして大寒波が予想されるときは水道の蛇口を少しだけ開けておくことが有効です。
蛇口の開き加減は、蛇口からポタリポタリと水がしたたるくらいでOK。
少しもったいない気もしますが、水が出なくなるリスクを考えれば簡単にできる対策ですよね。
これは井戸からの配管だけでなく、給湯器からの配管にも効果抜群です。
その場合は水の蛇口ではなくお湯の蛇口を開くことをお忘れなく。
トラブル3:徐々に水が出にくくなってきた
井戸ポンプを使用していて、年々水量が減っているように感じることもあります。
ストレーナーの詰まりによる場合
水が急に出なくなるのではなく、徐々に出にくくなってきた場合、
考えられるのはストレーナーの詰まりです。
井戸ポンプには砂が入ってくるのを防ぐために、ストレーナーや砂こし器が備わっています。
このメッシュ部分に砂がだんだんと付着し、水が出なくなっている可能性が高いと思われます。
特に近隣で大規模な工事などがあると、
振動などにより井戸の中の砂が舞い上がり、ストレーナーが詰まりやすくなる場合があります。
対処方法はストレーナーの清掃。
ストレーナーは、ポンプ稼働中は常に砂を取り除いてくれているため、定期的な清掃がおすすめです。
また、井戸水の水質によっては鉄分などが付着する場合もあります。
砂だけでなく藻もついていた、という事例もちらほら。
定期的にきれいにして、井戸ポンプを長持ちさせたいですね。
トラブル4:長年使用してきたのに、急に水が出なくなった
問題なく使用していたのに、突然水が出なくなるというケースもあります。
井戸ポンプそのものの故障
どんな設備でも長年使っていると、不具合箇所や故障が発生しやすくなります。
それは井戸ポンプも同じです。
何年も問題なく使えていたのに急に水が出なくなった場合、
井戸ポンプのどこかに不具合が出ているかもしれません。
経年で劣化しやすい箇所は、圧力スイッチやインペラなどです。
圧力スイッチが故障すると、水が出なくなる症状のほか、
逆にポンプがずっと動き続けることもあります。
インペラとは、圧力を作り出すためのプロペラのようなもの。
摩耗すると圧力を作れなくなるため、水が出なくなります。
経年による摩耗は当然ですので、消耗品と考えて交換しましょう。
圧力スイッチなどは部品単体でも販売していますが、専門の修理会社に依頼するのがよいでしょう。
トラブル5:ポンプから異音がする、音が大きくなってきた
水の汲み上げは問題なくできるが、ポンプなど電気系統の作動音が大きいと、
故障を疑ってしまいますよね。
経年によりポンプの機械部分の摩耗による
動作時のポンプから、これまでなかったような変な音がしたり、
音が大きくなったと感じたら、それも修理の合図です。
水が問題なく出ていても、近いうちに出なくなる可能性があります。
また音が大きくなると、ご近所への影響も心配ですよね。
放置すると騒音になってしまう恐れがありますので、早めに修理会社に相談しましょう。
この場合の原因は、ポンプの機械部分であるモーターなどの劣化が考えられます。
モーターはポンプの心臓部。
新しいものに交換するのが安心です。
屋外にあるポンプからの異音は気づきにくいものですが、時々チェックするようにしたいですね。
まとめ
日ごろ何気なく使っている井戸ポンプ。
生活基盤を支えるインフラという性格が強く、トラブルが起きると影響が大きいですよね。
今回取り上げた5つの事例は、井戸ポンプに多いトラブルです。
対処方法をおさえ、もしもの際に迅速に対応できるよう備えておきましょう。
自然の恵みである井戸は貴重な資源、長く大切に使っていきたいですね。