水道水は安全なの?水道水に含まれる放射性物質について

水道水の安全性は非常に重要な問題です。
特に、水道水にどのような成分が含まれているか、放射性物質などが含まれていないかということを気にされる方は多いのではないでしょうか。

国内では、東日本大震災の福島第一原子力発電所事故後、大きな注目を集めたテーマでもあります。
最近の台風被害で放射線量の高い土嚢が流出するなど、改めて水の安全性が問われている局面であるともいえるでしょう。

今回は、水道水の安全性、特に放射性物質にフォーカスしてお届けします。

水道水の水質について

私たちが何気なく使っている水道水。
一体どういった基準によって安全かどうかが決まるのでしょうか。

水質基準は51項目


日本の水道水の水質は、水道法という法律によって、安全性についての基準が定められています。
水道水質基準と呼ばれるこの基準は、平成16年以降改正が繰り返され、現在は51の項目が「水質基準項目」とされています。

国内の水道水は、すべてこの51の基準をクリアしなければならず、水道事業者に対し検査が義務付けられているのです。

水質基準項目は、一般細菌、大腸菌などの病原生物による汚染、重金属や一般有機物、着色、味、臭気などの区分それぞれについて、複数の項目が設定されています。

安全性はもちろん、変な味がしないかといった味覚や、泡立ちや濁りがないかなどの視覚といった観点からも検査が行われますし、
水道水を消毒するプロセスで使用する塩素などの薬品が残留していないか、といった点も、この検査において確認されているのです。

ほかに留意する項目や検討項目も


水道法では、水質基準項目の51項目のほかにも、「水質管理目標設定項目」「要検討項目」という項目が設定されています。
この中には、現在水道水からは検出されていないものの、今後検出される可能性があるものや、水道管理において留意する必要がある項目などが含まれています。

この「水質管理目標設定項目」にはウランなど、「要検討項目」にはダイオキシンなどが含まれ、合わせて70項目を超えています。
 

どのような水質管理が行われているのか?

水質管理は、水源や浄水場といった上流から、使用場所といった下流まで、水が使用されるまでの多くの工程において行われています。
1,350万人へ給水を行っている、全国最大規模の東京都水道局の行っている水質管理の状況を見てみましょう。

水源


関東全域の河川などに設けられた、約60か所の観測地点において、月1回のペースで検査を行っています。
水質を検査するほか、河川の支流の状況も確認しています。

また、定期的な検査のほかにも、移動先で水質検査ができる水質試験車でパトロールし、水質の測定を行っています。
ちなみにこの水質試験車は小型バスくらいの大きさで、衛星携帯電話も備えた本格的な検査設備を搭載しており、
子どもたちに人気の「はたらく車」のひとつです。

浄水場


浄水場では、浄水処理を施す前後で水質の検査を行っています。
浄水処理には複数の工程が存在するため、その各工程において検査を実施しており、
魚を用いた検知装置などによって、常に水質を監視し、万が一異常が起こった際にはすぐに発見できるような体制をとっています。

給水栓(蛇口)


浄水処理された水が、最終的に使われる給水栓、つまり蛇口でも、もちろん水質検査を行っており、その検査箇所は都内131か所に上ります。
ここでは、自動で常に水質を監視できる装置を導入して、残留塩素などをチェックするとともに、定期的な精密検査も行っています。

このように、大切な生活のインフラである水道水は、さまざまなプロセスで何重にもチェックされ、その安全性に万全を期しています。

放射性物質の測定について

東日本大震災以来、とりわけ私たちの関心が向かったのは、水道水に含まれる放射性物質の量ではないでしょうか?
放射性物質の測定についても、各自治体で取り組みが進められています。

全ての浄水場で毎月検査を実施


東京都水道局では、すべての浄水場で検査を行っています。
検査項目は、放射性ヨウ素放射性セシウムです。

放射性物質は、水道法に加え、食品衛生法においても基準値が定められているため、こうした基準に基づいて検査を実施しているのです。
また、浄水処理をされる前の原水と、処理後の浄水の両方で検査を実施しています。

さらに、5つの水系の主要な浄水場では毎日測定を行っています。
主要な浄水場とは、江戸川水系の金町浄水場、荒川水系の朝霞浄水場、多摩川水系の小作浄水場、荒川・多摩川両水系の東村山浄水場、そして相模川水系の長沢浄水場の5か所です。

なお現在、原水と浄水の双方から放射性物質は検出されていません。

福島県では月1から週3で検査

福島県においては、エリアによって検査頻度が異なり、週に3回から月に1回のペースで検査を実施しています。
検査するポイントは、水源ごとの浄水場や配水管の末端など、複数の箇所です。
また浄水施設だけでなく井戸水の検査も実施しています。

なお、いずれの検査ポイントにおいても平成23年5月5日以降、放射性物質は検出されていません。

放射性物質を取り除く仕組み

生活水に放射性物質が含まれていると、私たちの健康を蝕みかねません。
万が一、基準を超える放射性物質が水の中に含まれている場合の対応についても知っておきましょう。

放射性セシウムは沈殿しやすい


放射性物質の中でも放射性セシウムは、地面などに付着したものが雨などで流され、河川に入り込む場合があります。
放射性セシウムは地面に浸透することは少なく、地面に付着するケースがほとんどだそうです。

河川の水は、水道水の原料となる「水道原水」として取水されるため、浄水処理を施す段階で、水道原水に含まれるさまざまな物質を取り除く必要があります。

放射性セシウムは、水中の泥などと一緒に沈殿しやすいという特徴を持っています。
そのため、原水をろ過処理するための沈でん池やろ過池などを通過させることで、細かい泥などと一緒に取り除くことができるのです。
大雨などで取水する河川の濁りがひどい場合には、取水そのものを取りやめる場合もあります。

ろ過後、消毒、検査し安全を確認

沈でん池やろ過池など複数のろ過処理を経た原水は、最終的に飲み水に適するよう消毒処理を施されます。
その後、放射性物質モニタリング検査を実施し、安全性が確認された後に、送水管を通じて給水され、需要場所まで送られるという流れです。

放射性物質の検査には、ゲルマニウム半導体検出装置が使用されることが多いようです。
高純度のゲルマニウム半導体を用いたこの装置は、効率よく放射線を測定することができます。

国の基準値より厳しい独自基準を設ける自治体も


放射性セシウムの管理基準は、東日本大震災後の平成24年4月に、食品衛生法における飲料水に係る新たな基準が10Bq/kgと設定されたことを踏まえ、水道法においても同様の基準値が適用されました。

これは、国際保健機関(WHO)の「飲料水水質ガイドラインにおけるガイダンスレベル」が定める飲料水経由の内部被ばくの個別線量基準0.1mSv/年を大きく下回るものとされています。なお、WHOのガイダンスレベルも「十分保守的なもの」と評価されています。

一方、国内ではこれらの基準値よりさらに厳しい基準を独自に設けている自治体もあります。
例えば、福島県や横浜市では、国の基準より10倍厳しい1Bq/kgを採用して検査を行っています。
検査結果は公表されており、報告によるとこの独自基準をクリアしているとのことでした。

まとめ

生活に欠かせない水道は、飲料としても使うことから、その安全性は非常に重要な問題です。
特に放射性物質は目に見えず、またその影響も深刻なものであることから、多くの人が懸念する課題だといえます。
ただ、放射性物質について過剰に心配することなく、正しい知識を身に付けることで不安を解消することもできるでしょう。